レビュー

ヒロインのかわいさはS級、ただエログロ注意。コミック『インフェクション』レビュー【ネタバレあり】

コミック『インフェクション』(1~12巻)のレビューをまとめている。あくまでも私個人の見解・感想なので、「そういうふうに感じるヤツもいるんだ」と広い心でご高覧頂けるとうれしい。尚、ネタバレを含むため、未読の方は注意してほしい。

コミック概要

宮城県仙台市を舞台に、バイオテロによって突如現れたゾンビ(作中では「保菌者」)による脅威から生き延びようと奮闘する、主人公と仲間たちの姿を描いたパニックホラー。2015年12月に創刊され、ブログ執筆時点(2018年10月20日)で12巻がリリースされており、現在も継続中。週刊少年マガジンに連載されていたが、途中からマガジンポケット(スマートフォン専用アプリ)に移籍し、現在に至る。

総合評価

★★★☆☆ 3.0

ポスト・アポカリプス系が好きな私としてはドンピシャリなジャンルのコミックなのだが、巻を経る毎に期待値が低下してしまった残念な作品。骨太なパンデミックものを期待して読むと肩すかしを食らうので、リアルなサバイバルを求める方にはあまりお薦めできない。また構成や展開に無理が多く、全体が嘘くさくてチープな印象になってしまい、感情移入しにくいのも難点。特に①ご都合主義なストーリー、②過剰なエロ描写、③チート過ぎる無双キャラ といった要素が興を削いでしまうことから、この手の作品で最も重要だと思われるハラハラ感や緊張感を感じにくい。

特にAmazonレビューでも不評なのが、保菌者の体から大量に湧き出している蛆の描写。虫や蓮コラ(※細かいものがびっしり集まったもの)への耐性がない人にはかなり厳しいと思われるため(これが原因で読むをやめたという方もいるし・・・)、もう少し保菌者をマイルドに表現できればよかったのにと思う。作者的にはきちんと理由がある設定なんだろうが、読者を無駄に遠ざけてしまう要素であり、非常にもったいない。

ただ、リアルさや緊張感を求めずに、「ゾンビがはびこる世界を舞台にしたラブコメ&エロマンガ」という前提で見れば、わりと楽しく読める作品だと思う。作者の画力が非常に素晴らしいので、ヒロイン達がとてもかわいい。ナイスバディな姐御キャラから、発育途上な妹的キャラまでいるので、好みの推しメンが見つかるだろう(私はらぎ姉推し)。ブログ執筆時点で12巻まで読んだが、もうストーリーやフラグ回収は正直どうでもよくなっていて、らぎ姉を見ることだけが唯一のモチベーションになっている。総合評価のスコアも「らぎ姉がかわいいから」という一点張りで3.0としている。

保菌者の見た目が虫系で結構グロい。「イナゴの佃煮」を難なく食べられる私でもちょっと引くレベル

良いと感じたポイント

感染地域が限定されている

物語の舞台となる宮城県仙台市で発生したアウトブレイクは政府がテロの前兆を察知していたことが奏功して、封じ込めが成功しており、感染地域は宮城県内のみとなっている。そのため地獄絵図の感染地域と、日常生活を維持している非感染地域が共存しており(メディアを通して状況は伝わっている)、安全地帯にいる人間による干渉が倫理の崩壊を食い止めるストッパーとなっている。

例えば、同じ国民に銃を向けて良いのかという世論に押されて、自衛隊は銃器を使用できないし、治癒の可能性を否定できないという理由で、保菌者を殺すことができずにいる。そのため前線で対処する消防隊は保菌者を捕縛して足かせで動きを封じるなど、非常にまどろっこしい対処に甘んじている。もちろん、敵はそんなのお構いなしに容赦なく襲ってくるが・・・

殺す気満々で襲ってくる敵に対して、こちらの対抗手段は「無力化」のみ。殺せないというのはとても歯がゆい。

この歪な倫理観がサバイバルの足かせとして絶妙に機能していると思う。他人の家に侵入しただけで射殺OKが社会的なコンセンサスとなっているアメリカと違って、いかにも日本的なやりようがリアルに感じる。当然、感染地域の人々はこの状況を変えたいと思っており、自衛隊が銃器を使えるようにするため(国会で特別法案を可決させるため)、世論を動かすべく策謀を巡らす人も出てくる。こうしたやりとりが物語に深みを与えていると思う。(ただ、その設定や深みを作者が生かし切れていないのも事実)

また感染地域を限定的にすることで、今後事態を収束する方向に持っていくことも容易にできるし、逆もまたしかりで、作者の力量次第でいかようにも面白くできると思う。個人的には事態を収束させて、狂気の世界からもとの日常生活に引き戻された人々の葛藤を描いてほしいと思うし、そこからの再アウトブレイクも、映画「28週後」みたいで楽しめるだろう。

非感染地域の東京は、市民がデモできるくらい都市機能がほぼ正常に機能している

 

ヒロインがかわいい

最初にこの本を手に取った理由は、1巻の表紙絵がキレイだなと感じたからで、実際読んでみても期待通りで作画が素晴らしいと感じた。Amazonレビューを見ても、絵に対する不満はほとんど見られないので、単に私個人の好みにマッチしているというだけでなく、多くの方に受け入れられるクオリティがあるということだろう。キャラクター設定に疑問を感じることもあるが(序盤で保菌者にスカートを脱がされて以降、下がパンツ一丁なきららとか)、とにかく絵はキレイでかわいい。

左から「五月雨紗月」「磯波きらら」「流水ながみ」(通称:ながみん)「木皿儀千佳」(通称:らぎ姉)。

良くないと感じたところ

「保菌者」と「感染者」がわかりにくい

蛆がわいているヤツが「保菌者」で、そいつに噛まれると「感染者」となる。ただし、感染したからといって必ずしも保菌者になるわけでもなく、また死ぬわけでもない(感染後一両日中に仮死状態となるが、新型が撒き散らす粉?を浴びると覚醒する。仮死状態では無害だが、覚醒後は素手で人間の腕を引きちぎれる位に強化される上に全力疾走で襲ってくる)。この設定はゾンビものとしては少し珍妙で、わかりにくかった。感染によって新たな保菌者が生まれないのであれば、どうやって都市を壊滅させるほど数を増殖させたのか謎だし、その答えも提示されていない。やはり「噛まれたらゾンビになる」というルールをシンプルに踏襲してほしかった。また敵からの当たり判定も非常に曖昧で、”服の上から噛まれて軽く歯形がついただけでも感染する” という謎の仕様が読み手を更に混乱させるし、私はかなり興ざめしてしまった。

また当たり判定以前の問題として、特殊感染者の「メット」に銃で射殺された被害者が感染者になっているのには驚いた(悪い意味で)。メットが弾丸に自身の細胞を塗りつけていたなら接触感染しているので理解もできるが、そのような示唆もないため、もう何が何やらという感じだ。

服の上から思いっきり噛まれている主人公。これだけで感染するらしいが、なぜか主人公だけは無事という謎設定。

 

無意味なエロが多い

私は必然性のあるエロは遠慮なく作中に取り入れるべきだと思っているので、「エロは全てNG」と言いたいわけではない。明日の命の保証もない世界にいればこそ、燃えるような恋をしたり、逆に恋愛感情なしに慰め合ったりすることもあるだろうから、エロも使い方によっては世界観を表現する手段になると思うが、一方で無意味なエロは逆に興を削いでしまう。例えば、作中では保菌者がターゲットを襲う際に、男の場合は容赦なく噛みつくのに、女は取り囲んで服を破いたり、スカートをズリ下げるみたいなシーンがある。変に読者の気を引こうとして無理にお色気要素をちりばめることで、不自然な展開になっている場面が意外と多い。

こういう無駄なエロが随所にちりばめられており、興を削いでくれる。

 

無双キャラがすべてを解決

私がポスト・アポカリプス系が好きな理由は、極限の状況下での人間ドラマが見たいから。知恵と力を振り絞って大きな困難に立ち向かうところを見るのが好きだし、なにより失敗=死という極限状態は非常にエキサイティングだ。ただ、その期待感を完全にぶっ壊してくれるのが、チートな能力を持つ無双キャラの存在で、作中では神城と香里が該当するだろう。神城は手刀で敵の首をちょん切ったり、1000体以上の保菌者を一人で壊滅させている。香里に至っては小6で学者顔負けの論文を書くわ、空飛ぶわ、念力で保菌者の群れを屠るわ で、やりたい放題だ。度が過ぎる無双っぷりは興醒めしてしまうので、「戦況の流れを変えられる豪傑」くらいに抑えてくれればよかったのにと思う。

小6の妹・香里が群がる敵を念力?で瞬殺。ここまでくるとストーリーとかどうでもよくなる。

特に神城が、避難所になっている高層マンションに群がる保菌者の大群に立ち向かうシーンでは、無策で真正面から突撃させているせいで、「脳筋バカのチート無双」っぷりがより際立っている。本来の神城は理知的で且つ人並み以上の戦闘力を併せ持った「憧れのヒーロー」的な位置づけであるにも関わらず、雑な描き方のせいでこれまで築いたキャラ設定が壊れてしまっている。元来の神城なら、「一人で立ち向かう」という部分はかわらないにしても、もう少し戦略的に行動するはずだ。例えば、ガソリンスタンドに誘導して炎上させたり、地下鉄に誘導して列車でミンチにしたり(自分で運転する必要あるけど)、逆に壊滅以外の手段を採るなら単純にマンションから引き離したり、大きなスタジアムの中に閉じ込めるなど、効率的に戦える方法はいくらでもあったと思われる。

1000体以上の感染者にまさかの単騎正面突撃。神城はもっと頭使うはずだけど・・・

 

主人公に共感できない

私はいまいち本作の主人公に感情移入することができない。特に序盤では青臭い性格で考え無しに突っ走る局面が多く、そのたびに周りの過保護すぎるサポートや奇跡的なご都合主義で生き延びている。例えば、きららに家族の安否を確認させてやりたいという理由で、保菌者が溢れる校舎に携帯電話を取りに行こうとしたり(安否確認って命がけでやるもんじゃないっしょ?)、自分の非力さを無視して保菌者の群れの中に他人を助けに行ったり(仲間の助けがあって事なきを得る)するなど、脊髄反射的に青臭い行動をとる。それはまるで、TDLでミッキー&ミニーを見つけた子供が無邪気に駆け寄る様に似ていて、危なっかしくて見ていられない。心根の優しさや純粋さは主人公の必要要件なのかもしれないが、それにしても「少し立ち止まって考えようよ!」と思わずにはいられない。そんなわけで無謀なことを青春ドラマ的なノリで推し進めようとする主人公に、あまりシンパシーを感じられなかった。

そんな彼も中盤以降は経験を積み、それなりの強さと精神的なタフさを手に入れるため、そこそこ見られるようになっていくのだが、それと引き換えにどんどんゲス化していくため、ますます共感できなくなってくる。恐らく複数のヒロインとのエロい絡みを入れていきたいという作者の意向があるためか、突如主人公が「俺はみんなと付き合う」みたいな宣言をし出したときには結構ドン引きしてしまった。しかも、過酷な環境に順応・成長した結果みたいになっているのは、「ち・が・う・だ・ろーーーー!」って声を大にして言いたい。

まさかの三股宣言。この後、ながみんにも手を伸ばすので四股になる。こいつに共感できる読者っているのか?

 

ご都合主義/強引な展開が多い

話の展開が無理筋で、「それはないんじゃない?」と感じる部分が多い。例えば、感染した妹が隔離施設に閉じ込められてしまった際、”一人にさせたくない”という理由で脱出させようとするのだが、主人公も共に隔離施設内に入るという選択肢は考えなかったのだろうか?妹の死後も隔離施設から出ないという条件付きで共に施設に入れば、安全な川内の中で最期を看取ることができたと思う。また施設内に止まれば他の避難者への感染リスクを防げるし、スタッフとして労働力にもなる。家まで無事にたどり着けるかどうかもわからない状況で、且つ施設全体をリスクにさらして妹と脱出するというのは少々強引かなと思う。最終的に脱出という手段をとるにしても、川内に止まるという選択肢を全く検討すらしないで安直に「家に帰る」というのが腑に落ちない。というか、そんなに視野の狭い人間が無事に生き残れる気がしない。

さらに脱出作戦には多くの避難者が協力しているところもご都合主義な感じがする。いかに妹に恩義を感じている人が多いとしても、自分たちの安全を脅かしてまで協力する人が何十人もいるだろうか・・・ 主人公が熱血キャラなのは設定の一つとして許容できるが、周りが容易に絆されるというのは少し現実離れしているように感じる。

川内の隔離施設から妹を脱出させるために協力者を募るシーン。全員が異様に協力的。

 

奇想天外すぎる新型の保菌者

物語の進行に伴って人間側のサバイバルスキルが向上すると、通常の保菌者を脅威と感じられなくなってハラハラ感が減退する。そのマンネリを防ぐために、新種の保菌者や変異体を登場させたくなるのは十分わかるが、設定や描写を少しでも誤ると世界観を大きく壊してしまう恐れがある。作中の変異種はまさにそれで、恐怖心を煽るために保菌者の能力を高めすぎてしまったが故に、かえって興が削がれたように感じる。

銃火器や車を自在に扱えて、且つ人間を罠にかけることもできる新種「メット」。能力高すぎじゃない?

 

最初に登場する巨大化した変異種(水や他の保菌者を吸収することで肥大化したもので攻撃力や突進力がアップしている)はまだ許容範囲だが、その後に出てくる「メット」は人間に匹敵する知能で車を運転したり、こちらの移動手段を破壊して追跡できないようにしたり、銃を使ったり(しかもマガジンの残段数を意識して戦える!)できるため、やり過ぎ感が強かった。やはり「メット」は保菌者ではなく、狂った人間という設定にしてほしかった。

本作は自衛隊の武器使用を制限するなど、リアル志向な要素を取り入れているにも関わらず、敵が奇想天外すぎてファンタジーに寄りすぎている。リアルとファンタジーが場当たり的に同居しているのが気持ち悪くて、この世界にどっぷりと入っていけない。もしリアルに軸足を置くなら、この新型保菌者は「インフェクション」にはアンマッチな気がする。

巨大化した「メット」を日本刀でいなす神城。どこから見ても『彼岸島』の邪鬼。

 

と、まあ、こんな感じで悪いところばかりが目立つ本作だが、作画は本当にすばらしいので、このガッカリ感は形容しようがない。本当にもったいないと思う。是非次回作以降、作者の方は作画に注力し、原稿・原案は他の作家さんの作品をベースになさったほうが良いと思う。

東京の片隅で、娘+嫁+猫2匹と同居中。家族が寝静まった深夜に、FPSとシミュレーションに興じるサラリーマンゲーマー。家事&育児と仕事に追われる毎日で、買ったものの開封すらしていないゲームが多数。マジで老後はゲーム三昧の日々を送ろうと固く心に誓いながら、日々を清々しく生きています。