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第4帝国?共産主義?  『Metro2033』のダークな世界観と時代背景を整理してみた(ネタバレ注意)

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『Metro:Last Light』の発売が目前に迫る中、リリースされる予告映像を見ていたら、なんか待ちきれなくなってきたので、久しぶりに『Metro2033』をリプレイ。「やっぱりダークな世界観がイイですなぁ」ということで、上がりすぎたテンションのやり場に困ってブログを一本書いてみた。ゲーム中では時代背景などがちょっと説明不足で、一部ストーリーに置いてけぼりを食らう場面がいくつかあったので、メトロ独特の世界観が形成されるまでの歴史や背景なんかを整理してみた。尚、ゲームと小説の情報をベースにしているが、資料がない部分は想像で補っているので、その点は平にご容赦頂きたい。
(※一部小説じみた書き方になっている箇所があるが、決して小説のコピペじゃないっす。念のため・・・・)

6/11追記:『metro2033』は原作小説が日本語訳されて発売されている。ストーリーの概略が気になる方は別記事の「10分で読める 小説『metro2033』のストーリーラインまとめ(ネタバレ注意)」をご一読あれ。

『Metro2033』って、どんなゲーム?

ドミトリー・グルホフスキー氏の小説「Metro2033」を原作として、ウクライナのディベロッパー「4A Games」が開発したサバイバルホラーFPS。核戦争で荒廃した後の世界を描いた、典型的なポストアポカリプス作品。核戦争を生き延びた生存者達は放射能に汚染された地上を避けて、モスクワにある地下鉄内で生活することになる。それから20年・・・ 地上は放射能による影響だけでなく、突然変異で生まれたミュータントによって更に危険な場所となっていた。また新種のミュータント「ダークワン」によって、人類は安住の地も脅かされつつあった。プレイヤーはこれらの脅威に対抗するため、人類の存亡をかけた戦いに乗り出していく。

世界大戦、そしてXデーの到来へ

大戦の影響は市民の生活に暗い影を落としていた。物価は上昇し、生活物資の調達にも事欠くことが日常茶飯事で、日々の生活もままならない。その状況は首都モスクワと言えども例外ではなく、出歩く人もまばらだった。誰もが暗い表情で視線を落としていたが、一人彼女だけは表情が明るかった。彼女の胸には小さな赤ん坊が。恐れや疑いを知らない無垢な表情を見ていると、安らかな気持ちになれた。この子と二人なら、ちょっとくらい生活が苦しくたってがんばっていける そんな気持ちになっていた。外で遊ぶ子供たちや出歩く人が途絶えた屋外は昼間だというのに静まり返っており、その静寂が二人を包んでいた。

直後、二人を包んでいた静寂は、街に配備されている防災用サイレンによってかき消された。設置されている数がまばらなためか、サイレンの音が風に乗って聞こえてくる。切り裂くような音ではなく静かな音色だったが、彼女の表情は一気に強張った。サイレンの音は敵のミサイル攻撃を知らせる合図だったからだ。彼女は赤ん坊をしっかりと抱えると、身支度などお構いなしに一目散にアパートを飛び出してシェルターに向かった。
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ニュースや国営放送でミサイル攻撃への恐怖心を植え付けられていた多くの住民は、取るものもとりあえず近くのシェルター(地下鉄)へと殺到した。警報からミサイル着弾までの時間は限られており、タイムリミットを過ぎるとシェルターの入口は閉じられてしまう。その役割は軍に任せられていた。

赤ん坊を抱えた彼女がシェルター付近に到着するも、そこは既に逃げてきた住民でごったがえしていた。赤ん坊を群集から庇いながしっかりと胸に抱いて、人をかき分けていくが、なかなか前へ進めない。そしてやっとのことで入口までたどり着くことができたが、無情にもその扉はまさに締められようとしていた。彼女は最後の人混みを一気にかき分けて扉の中へ進もうとするが、身動きすらままならない。「なんとかこの子だけは・・・」周囲の喧騒に負けない大声とととに、祈るような気持ちで将校に子供を託した。将校に情が湧いたわけではなかったが、「兵隊さんお願い」その声に本能的に体が動いた将校は、促されるままにその子を受け取った。

無情にもそのままシェルターが閉じられ、母と子は別れ別れになってしまう。将校は赤ん坊を抱えたまま、長いエスカレータを地下に向けて下っていく。赤ん坊の肌着に何気なく目をやると、刺繍が施されていた。どうやら男の子の名前らしい。「そうか、お前の名前はアルチョムと言うんだな。」

ちなみに小説では母子ともに地下への避難が成功しているが、アルチョムが5歳のときに駅を襲ったネズミの大群(駅のプラットフォームを埋め尽くすような大群だったが、最終的には火炎放射器で駆除された)によって母親は命を落としている。そのとき母親がアルチョムを託したのが、今の義父という設定。

“助け合い” から ”奪い合い” へ

将校がシェルターの入口を閉じてから数分後、大規模な爆発音と振動が地下鉄構内に響いた。運よく地下鉄構内に駆け込むことができた住民たちは安堵に胸をなでおろすと同時に、逃げ遅れた住民の多くが核の炎で灰となってしまったことに対する深い悲しみに包まれていた。「運が悪ければ自分も・・・」 誰しもそんな思いに駆られていたし、そんな罪悪感とも安堵ともいえない妙な感情のせいか、助かった者達には独特の連帯感があった。住民たちは互いに励ましあいながら、この厄災をなんとか乗り切ろうとしていた。
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地下鉄構内はもともとシェルターとしての利用も想定されており(*1)、ある程度の物資や食糧も備蓄されていた。着の身着のままで逃げてきた住民にとって、配給される物資はとてもありがたいもので、その安心感も手伝ってか暴動やパニックは起こらなかった。住民の多くが(彼らをまとめる軍人でさえ)、数日乗り切れば救助が来ると信じて疑わなかった。

だがその期待はすぐにも裏切られることになる。何日たっても救助が訪れる気配が一向にない。しびれを切らした住民の一部は、偵察と称して地上の様子を見に行った。彼らが目にしたのは荒れ果てて荒野と化したモスクワの光景だった。爆心地に近いエリアでは、人間がそのまま蒸気となって一瞬で消えてしまったように死体が残ってはいなかった。かわりにコンクリートの壁に人型の黒い炭化したススが残っている程度だった。捜索隊の影はおろか、動物の影すら見えない状況で、地下にいる住民を除いてすべての人間は死んでしまったのではないかと思えるような光景だった。

偵察に出た一部の住人によって、地上の情報がメトロ全体にもたらされることになる。しかし、その後しばらくして核の灰を浴びた偵察隊員の体に異常が現れ始めた。地上に出ている時間が長かった者ほど影響は顕著で、ついには死者まで出してしまう。放射能の影響であることは明確だった。救助もなく、外に出ることもできないという状況が、住民たちを絶望へと追いやった。備蓄してあった食料や備品はとうに底をついており、飢えと渇きが住民達を苦しめた。当初の連帯感は希薄になり、他人が隠し持っていたわずかな食糧を奪い合うような光景も見られるようになる。「とにかく今を生きなければ」 そんな本能が、住民の心から理性をはぎ取っていった。

(*1)~「Moscow Metro」という名の地下鉄は,実際に第2次世界大戦時の空襲時に避難場所として利用されていたらしく,「世界最大の核シェルター」とも言われている。

軍の統制は弱まり、威厳と敬意の念はメトロ職員へ

地下に避難してからは、各駅にいる軍人が住民を統制するリーダーとなっていた。彼らは戦争の状況を誰よりも把握していたし、なによりこういった非常事態の対処に手馴れていた。だが一番の理由は銃を持っていたことかもしれない。

軍人が住民を統制するスタイルは、当初極めて順調に機能していた。住民も軍人に対して全幅の信頼を置いていたし、軍人も自分達が状況をコントロールできていると感じていた。歯車が狂いだしたのは物資が底をつき、地上へ出た偵察隊がバタバタと病に倒れ始めてからだ。助けもこない、地上に出ることもできない、食料も尽きた こんな状況下で軍人ができることと言えば、暴動が起きないように銃の力で住民を押さえつけることだけだ。配給というアメが与えられず、統制というムチだけが振るわれる状況下では、軍人に対する信頼感は失われ、憎悪の念だけが高まっていた。憎悪はエスカレートしていき、そもそも戦争を起こした(地上に住めない事態になった)元凶として、忌み嫌われるようになっていく。

そんな中で、状況の悪化を食い止めようと一部の人間が動き出していた。メトロ職員である。彼らは真っ暗闇の地下迷路の構造を細部に渡って知り尽くしており、地下鉄内に残された機材の扱いにも長じている。地下水がわき出る場所を整備して、住民に給水できる仕組みを整えたり、地下構内を照らす発電機器を修理したりと、住民が生きるうえで不可欠な存在となっていった。住民からの尊敬を集めることになったメトロ職員は、次第に軍人に替わってリーダとしての立場を確立していく。メトロの支配者は軍人からメトロ職員へと完全にシフトしていった。

『Metro:Last Light』の予告映像でも、シェルターの入口を管理していた軍人が地下世界でおちぶれていく様子が描かれている。短い映像だが、メトロの世界観がしっかりと描かれている良い映像だと思う。

駅ごとの自治が確立し、小国家の誕生へ

メトロ職員のリーダーシップによって少しずつ生活の基盤が整ってくると、リーダーを中心とした自治が確立していった。

なによりも重要なのは食糧の供給だが、飲み水は地下水と浄化システムによって賄い、食べ物はキノコの栽培など、太陽光を必要としない食物の栽培などでしのいでいた。中には地下鉄内のネズミを捕えて食べる者もいたが、疫病を媒介する恐れがあるため、挑戦する者はわずかだった。なによりひどい臭いと食感で食えたものではない。ゲーム内では養豚をしている様子も垣間見られるが、初めに豚の飼育を始めたのはアルチョムが暮らしているエキシビジョン駅だったらしい。地下の食糧事情が悪化してきた際に、決死隊(*1)が駅周辺にあるパビリオンから生き残った豚を駅に連れ帰っきた。その後、駅構内で栽培できるキノコなどをエサとしながら、繁殖させていった。またこれを皮切りに、徐々に地上の探索と物資調達が行われるようになっていく。

エキシビジョンはその名前の通り、地上に博覧会があったため比較的物資を回収しやすかった。ほかにも市場に近い駅(ゲーム内に登場するマーケット駅は恐らく市場の中心にある駅)や軍事基地に近い駅など、駅ごとの特性を活かして固有の物資を調達していった。地下世界で生産できないものは地上から入手するというスタイルが確立されていく。食料供給のシステムを自分達で構築できない駅では、列車を解体してトロッコを作ったり、鉄くずから鍋やナイフなどの生活必需品を作るなどの工業化を行ったり、地上から回収した貴重な物資と引き換えに食料と交換するなど、他駅との交易に活路をみいだした。(*2)
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これらは当初、少数の有志が手さぐりで始めた試みだったが、リーダが住民を計画的に生産活動に従事させるなど、組織だった動きに変化していった。水汲みをする者、キノコを栽培する者、調理する者、交易を担当する者など役割分担やシフトを組むなど、効率的に作業できるように采配していった。住民は定められた役務をこなし、その対価として食糧の配給を受けるといった自治システムが確立されていった。自治の仕方やそのレベルは駅によってまちまちであり、一つの駅がまるで一つの国家のように機能し始めた。

(*1)~これら決死隊と呼ばれる人たちが、ストーカー(地上に出て物資や弾薬などを調達してくる人々)の始まりだったと考えられる。当初は命を削って探索していたのだろうが、防護服やガスマスクなどの装備を徐々に整えていくことで、探索の範囲や活動時間が広がり、専門職としての地位を確立していったのだろう。

(*2)~2033年には地下世界の共通通貨が5.45m弾となっているが、Xデー直後はミュータントもおらず駅間戦争も本格的化していないはずなので、弾丸のニーズはそれほど高くなかったと思われる。そのため貨幣としての価値を見出されるのはもうちょっと先の未来で、この時点では物々交換によるやりとりが主だったのではないか。

持たざる者は野盗へと身を落とし、国家間の抗争も勃発

自給自足の究極のエコシステムが地下世界にできあがりつつあったが、全ての駅がこれを実現できたわけではない。老人と女子供ばかりで指導者となるメトロ職員がいない駅や”特産品”を生み出せない駅では困窮を極めた。そういった貧しい駅からは徐々に住民が去って行ったが、周りの駅が彼ら全てを受け入れられたわけではない。食料も居住空間も十分ではないため、自国の住民を養うので精いっぱいだ。そこへ”難民”がおしかけても受け入れられる可能性は低い。新しい住民として歓迎されたのは、労働力となる若い男女(とその家族)や、なんらかの技術や知識に長けた者に限られただろう。逆に駅の風紀や自治を乱す者は、資産没収と追放処分が下され、駅から排除されることもあった。そういった者達が貧しい駅にふきだまりのようにたまっていった。

やがて受け入れてもらえなかった者達は暴徒となって物資が豊富な駅を襲うようになる。他人のものを奪わなければ生きていけない人達だった。このような事態を受けて、各駅は自警団を組織するなど、本格的な武装化に着手することになる。暴徒が使う武器は石ころや鉄くずなど、凡そ武器とは呼べないものばかりだったが、飢えと渇きで狂人化した人間が集団で襲いくる様は脅威だった。そこで軍人が使っていた銃火器を中心とした殺傷力の高い武器が求められるようになっていく。
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当初は自衛目的で武装する駅がほとんどだったが、その後一部の駅の指導者は、持て余した武力の矛先を他の駅に向けるようになる。特産品や物資が豊富な駅を併呑していこうという風潮ができた。すべての駅の指導者が野心溢れる独裁者ではなかったが、「やらなければやられる」という恐怖感が全ての駅の重武装化に拍車をかけていった。小さな駅は同盟を結んで互いに連携したり、他駅の力を借りて隣駅を急襲するなど、さながら三国志のような攻防が狭い地下世界で繰り広げられることになった。

こうした駅同士の抗争から一歩抜きんでたのが、環状線上に存在する主要駅だった。日本でいうところの山手線のようなもので、環状になった駅同士は互いに行き来しやすく、また複数の支線が環状線に交わることで人々の交流が盛んであり、結果として特産品のやり取りなどで潤っていた。物資が豊富な駅は狙われやすいことから、環状線上にある各駅の指導者たちは駅間の相互同盟を締結した。以降、中世ドイツの商業都市間同盟に倣って「ハンザ同盟」(通称ハンザ)と呼ばれることになる。ハンザは地下世界では一大勢力となっていった。

共産主義の勃興と戦争

うまいこと特産品と交易で潤う駅もあれば、うまく立ち回れない貧しい駅もある。終末戦争を生き延びた人間同士、互いに物資を分け合えばよいのだろうが、圧倒的にものが足りない状況では絵空事だ。駅間で格差が生じてくると、それに不満を持つ者が現れてくる。かたや困窮している人々がいるというのに、一方では利益を上げて裕福になっていくとは何事か!と、資本主義的なスタイルを”人間の欲望と競争主義に立脚した理不尽な思想”と忌み嫌う者たちだ。同じ思想を持つ人間が集い、声高に自分達の思想を叫び、周りの人間を感化していくことで、共産主義思想を持つ駅ができあがった。もともとロシアは社会主義国家であり、ソビエト連邦時代を古き良き時代と懐古する人も少なくない。そういった因子が少なからず含まれる土壌では共産主義が勃興する素地がもともとあったと言える。彼らはプレオブラジェンスカヤ広場駅を中心に、自分たちのイデオロギーをメトロ全体に広めるため活動を開始した。そしてこの思想に最も反発したのが、ハンザ同盟であった。
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主義主張が相容れないというだけでなく、地理的要素も双方にとって火種となっていた。環状線上に支配駅を持つハンザに対して、それを貫く線上の駅を共産主義者が支配していた。日本でいうところの山手線がハンザでそれを貫く中央線が共産主義といったところか。革命広場駅など、”赤”を連想させる駅ががハンザの加盟駅となっている点も問題だった。共産主義者は自分たちのシンボルとして、これらの駅をなんとしても手に入れたがった。「そちらの駅を一つ下さい。だって僕らのシンボルだもん。」 「やるわけねーだろぉ ヴォケ!」 的なやり取りがあったかは不明だが、二つの相容れない思想がまじりあうことはなく、やがて大きな戦争へと発展していく。このころから、食料品と同じくらい軍事物資(武器や弾薬)の重要度が高まっていたと考えられる。

もともと地下鉄は核シェルターとしても機能するように建設されていたため、避難を想定して食料や医療品などの備蓄はあったが、軍事拠点としては想定されていなかったため、武器の類はほとんどなかった。軍人や避難してきた警官が自分の装備として持ち込んだものに限られる。そのため「戦争をする」という意味では、武器の総数が圧倒的に足りなかった。地上探索の成果として、武器を回収することもあったが、それでも数は限られたものだった。そこで地下独自のホームメイドな銃や弾丸が作られるようになる。大戦前の武器と比べて性能は劣っていたが、1丁の優れた銃よりも、粗悪な10丁の銃のほうが火力としては勝っていた。メイドインメトロの代表的な武器としてバスタードやダブルバレルショットガンなどがある。変わり種として、鉄球を空気圧で飛ばすティハールやボーガンの矢を連射できるヘルシングなどもある。ゲームの中では眺めているだけでちょっと楽しくなるガジェットだ。

武装レベルが向上してくるのと比例して、戦闘の激しさも増していったが、逆に戦線は膠着状態となる。地上の戦闘であれば迂回や奇襲といった様々な戦術が取れるが、地下世界において敵地と自陣をつなぐ経路は1本の線路でしかない。そのため、戦いはどうしても正面切っての銃撃戦にならざるを得なかった。しびれをきらした若者が、グレネード片手に特攻することもあったが、戦線を大きく変えられないまま死体の山だけができていった。

両陣営とも、目立った戦果を挙げられないまま、物資と人員だけを消費し続ける状況に焦りを感じ始めていた。共産主義側は指導部に対する不満が高まってきていることへの懸念があったし、ハンザは戦争によって商人の往来が減り、商業都市としての機能が衰えてきていた。このような状況から、両者は休戦協定を結ぶことになる。

戦争の終結とモグラ狩りへ

ハンザと共産主義者の停戦協定によって大規模な戦闘は終結し、一応の幕引きとなった。表向き、駅同士の自由な往来ができるようになったが、人々の心は荒んだままだった。どの駅も敵側のスパイや工作員を警戒する動きが強くなった。検問での何重にも渡るチェックは勿論、駅構内へ武器の持ち込みを禁止したり、常に監視下におかれたり、果ては立ち入りを禁止する駅まであった。怪しい動きをしたものや、パスポートや許可証にちょっとした不備でも見つかろうものなら、たちまちのうちに拘束され尋問を受けるようになった。冷戦時代のようなモグラ(スパイ)狩りが、駅間の自由な往来を妨げていった。

ファシストの台頭

ハンザや共産主義者、そして両陣営に属さない独立駅(独立駅同士で同盟を結ぶケースもこれに含む)など、複数の勢力が台頭するなかで、これらの闘争を終了させて国家的な団結を確実にしようとする動きがでてくる。いわゆるナチスドイツのような、イカれた全体主義者たちだ。彼らは、国家がその強さを保つためには、限られたエリートによる強力なリーダーシップをもとに、全構成員が個を捨てて一丸となるという思想のもと全体主義的な組織を作っていった。一応、構成員はまるっとロシア人でドイツとかは全くの無関係なのだが、彼らは自らを「第4帝国」と呼び、ナチスドイツをモデルケースとした国家を作り上げようとしていた。例えば、カギ十字の紋章を真似したりして。。。 まあ、何事も形から入るのは大事だからね。うん、うん。

ただ、ファシストは今のところ、プレシンキスカヤを中心とした3駅のみを勢力下においているだけであり、帝国と自称しているわりにはこじんまりとしている。まだ名前負けしている状態だ。だが、『Metro:Last Light』のPVを見るとファシスト側が虎視眈々と準備を整えている様子がうかがい知れる。彼らは突撃銃を手にした屈強な戦闘員の”量産”に成功しているように見えるため、次回作では彼らとの大規模戦闘が予想される。「ファシスト共め!待ってろよ!」

『Metro2033』に話を戻そう。小説の中でうまく描けているなと思ったのは、ナチスがユダヤ人を迫害したように、ファシストがコーカサス人を迫害しまくっていることだ。コーカサスとは黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈と、それを取り囲む低地からなる地域のことで、チェチェン共和国とかがある場所。ここで勘のいい人なら気づいたかもしれないが、実際の歴史上あったチェチェン紛争(*1)を踏まえて、ロシアの統一国家形成に水を差すコーカサス人をファシストが迫害する様子を描いている。史実をエッセンスとしてうまく小説に取り込んでいるあたりに、戦争に対する空しさやイデオロギーの怖さといった著者のメッセージが込められている気がする。
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さて、危険分子であっても一つの駅で完結してくれているなら大きな問題にはならないだろうが、そうは問屋が卸さないようだ。ファシストの基本特性として、民主主義で制定された法や仕組みを認めない上に、このような自治に対する試みを国家への侮辱や脅威と見なす。つまり自分達の教義に従わない者は全て敵となってしまう。仮にハンザや共産主義者が「お宅はそちらで勝手にやってて下さい」と言っても、「俺らの教義に従わないなら殺す」的な展開になるので、どうにもタチが悪い。どっちが先に仕掛けたのかはわからないが、ゲーム中ではファシストと共産主義者が戦争の真っ最中だったりする。

(*1)~1991年のソ連解体時、北コーカサスの諸民族自治共和国はロシア連邦からの分離権を憲法によっても認められず、独立運動をロシア当局に押さえ込まれた。中でもチェチェン共和国は分離独立の強硬姿勢を貫いたためロシア連邦軍の攻撃を受け、第一次チェチェン紛争が勃発した。以来、チェチェンを中心に戦乱、テロが続発している。(これはガチで史実 from wiki)

新興宗教の誕生

退廃した世界では、人はなにか大きな力に縋りたくなるものだ。メトロの世界でもそれは同様で、様々な種類の信仰が台頭している。”個人でなにかを信じている”レベルのものから、組織化されているものまで様々だ。後者の宗教集団は、組織への勧誘や食事・衣服の配給などのオペレーションが確立されており、さながら一つの国家のように機能している。教祖や神官によるありがたいお説教で信者の心をとらえるほかに、衣食住を提供することで心身共に支配している感じだ。三国志に登場する五斗米道 (*1)的な宗教国家が、メトロの駅にできあがっている。

一つの価値観を盲信する人達の集団というのは、ファシストに通じるものがあるため(自分たちの教義を受け入れないものは許さない的な発想)怖いものがあるが、小説/ゲームともに宗教戦争は勃発してはいないようだ。ただ、ハンザと共産主義が対立したように、遅かれ早かれ宗教がらみの戦争が起きるのではないかと、個人的には感じている。表向き「「神を崇めてみんなでお祈りしましょう」と謳っている組織でも、外部からの侵入を防ぐための武装人員は持っている。博愛を熱っぽく語る教祖の傍らで、自動小銃を小脇に抱えた屈強な信者が護衛しているわけだから、博愛の精神は教祖を信じる者にしか向けられないんだろう。教義上、「右の頬をぶたれたら左の頬を差し出しなさい」と教えているのかもしれないが、実際に頬をぶとうとしようものなら鉛玉をぶっぱなしてくるに違いない。

地下の世界で展開される宗教ってものは、博愛の精神を広めるという崇高なものではなく、盲目な信者を統率するためのツールでしかない感じがする。そう考えると、教祖様ってヤツはメトロ内で一番強かな存在なのかもしれない。

「強かな宗教家」と言えばコイツ。上の動画は『Metro:Last Light』の予告だが、Xデーを生き延びた男が地下世界で教祖になっている様子が描かれている。一見、なんの変哲もない動画だが、よくよく見るとコイツの強かさが垣間見れる。なによりも私が驚いたのは、核ミサイルが飛来する中で「アルマゲドーーン!」と気がふれたように叫んでいたコイツがしっかりと生き延びていることだ。Xデー当日は誰もが我先にと地下鉄へと殺到しており、大変な混雑状況であった。しかも入口では軍人による入場規制?までされる始末で、結果として逃げ切れなかった住民も大勢いたはずだ(主人公アルチョムの母親も時間に間に合わなかったため避難できなかった)。そんな中、聖書片手にアルマゲドンを連呼して油売ってたコイツがちゃっかり地下にいるって・・・・ どうだろう?相当強かだと思わないだろうか? そのくらいドライでシビアに生きてなきゃ、教祖になんてなれないよね。。。

(*1)~読み方は「ごとべいどう」。信者に五斗(=500合=90リットル)の米を寄進させたことからこの名がついた。呪術的な儀式で信徒の病気の治癒をし、流民に対し無償で食料を提供する場を設けるなどしたため、信仰を集めた。後に正一教と名を変えて現代まで残っているらしい。

ミュータントの誕生

人間が地上を荒廃させて地下に引っ込んでから約20年。地下世界でも相変わらず人間同士でドンパチを繰り返している合間に、地上では放射能の影響で変異した動物がミュータントとなって進化していた。防護服とガスマスクなしでは1分と生きられない世界で、彼らは放射能にすら適応していた。人間を寄せ付けない環境である地上も彼らにとっては楽園だった。
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ミュータントはその種類によって起源が諸説あるので、それぞれ見ていこう。

動物の突然変異

ゲームや小説の中で頻繁に登場するミュータントは、ほとんどが動物が突然変異したものと考えられる。特にライブラリアンなんかは見た目から、元はゴリラ(又は類似の霊長類)であったろうことが類推できるし、ラーカー(俗称ツルツル犬)は、ビーバーを脱毛させて狂犬病の属性を付与したらあんな感じになりそうだ。デーモンのように起源となる動物を想起できないような新種は、恐らく長い年月をかけて変異していったものと思われるが、それ以外の種はXデー後しばらくしてから出現が確認されている。小説の中では、地上に残ったわずかな生存者と数年間無線のやり取りがあったが、Xデーから2年ほどしてミュータントの攻撃を受けたことが記されている。ゲームに登場するミュータントのように、見た目が禍々しく変化したものではなかったろうが、放射能の影響で狂暴化した初期ミュータントだと考えられる。

人間の突然変異

ダークワンについては起源が人間の可能性がある。彼らは猪突猛進してくる他のミュータントとは異なり、人間とコミュニケーションを取ろうと試みている。主人公アルチョムが引き込まれる謎の精神世界は、彼らのテレパス能力を使ったコミュニケーションであり、その中で人間の言葉を使ってメッセージを発信している。このことから彼らの知性が人間に匹敵するレベルのものだということがわかる。Xデーからわずか20年しか経っていないにも関わらず、その間に動物(又は全くの新しい生物)が人間に匹敵する思考力を備えたとは考えにくい。もともと人間だったものが、放射能に順応してダークワンになったと考えるのが、個人的には腑に落ちる。

生物兵器の突然変異

大戦中から首都クレムリンでは生物兵器の研究が行われており、それが放射能によって変異した凶悪ミュータントが存在する。こいつらはクレムリンの宮殿の中に巣くっているアメーバ状の怪物で、宮殿に迷い込んだ人間を液体で捕食するアリジゴクのようなヤツだ。これはゲーム中ではNPC同士の会話にしか登場しないもので、小説を読まれていない方にとっては「そんなんいたっけ?」だろう。このミュータントはターゲットの脳や精神に直接影響を与える力を持っており、抗いがたいほどの魅力的な夢を見せることで人間を巣の奥深くにおびき寄せる。その影響範囲はとても広く、屋外でクレムリンの建物を目にしてしまったら、彼らに魅せられて一人ではもとに戻れなくなるらしい。ダークワンの精神攻撃に耐えうるアルチョムであっても、アメーバの攻撃には無力なので、ある意味無敵のミュータントかもしれない。

ガチで命を落とすような心霊スポットも点在

終末戦争後も血なまぐさい事件の尽きない地下世界では、数々の心霊現象が目撃されている。ミュータントの侵攻を防ぐために、住民を残したまま爆破したトンネルでは、生きた人間が忽然を姿を消すといった背筋が寒くなる現象が起きていたりと、ミュータントに匹敵するような脅威として心霊現象が存在する。カーンの説によれば、核攻撃によって天国と地獄まで破壊されてしまったことで、行き場を失った魂が現世に留まっているらしく、彼らに捕捉されるとそのままお仲間になってしまうらしい。

そんなわけで、この地下世界では、「轢かれると即死する幽霊列車」や「触れると一緒にあの世にイける子供の霊」など、怖いとか気味が悪いといったレベルを遥かに超越したゴーストが出現する。日本人が想像するところの心霊現象とは一線を画しており、もはや”DEATH属性付きのポルターガイスト”といった仕上がりだ。個人的に心霊現象というと、”いるはずがないものが写っている”的なさりげない演出が最も怖く感じるもので、パラノーマルアクティビティのような露骨に出てくるヤツには興ざめしてしまうタチなのだが、いかんせん”触れると死ぬ”設定なんで、ゲームでも小説でも緊張感がハンパない。

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また、これらのいわゆる幽霊以外に、アノマリーと呼ばれる超自然現象(稲妻のような放電)も発生する。スターウォーズのダーク・シディアス(皇帝)が指先から出す電撃みたいなヤツだが、こちらも触れれば当然即死。しかも神出鬼没でいつどこに発生するかは予知できない上に、触れる者全てを焼き払う(感電死か?)わけだから、個人的にはダークワンよりもタチが悪いような気がしている。ただし、カーンの教えに従うなら”達磨さんが転んだ”的に動かなければ干渉されないようなので、対処法さえ知っていれば死なずに済むらしい。(ちなみにゲームの中ではアノマリーが出現する場所は決まっており、また同行しているカーンが優しく対処法を教えてくれるので、なんら心配はいらない)

メトロマップをパワーポイントで作ってみたぞい

西暦2033年時点の勢力図をマップにしてみた。ちなみにゲームでは小説に全く登場しない駅がいくつもでてくるのでがんばって探しても見つけられないから悪しからず。ブルボンと出会うリガ駅、地上への出発地点となったマーケット駅、ファシストに占領されているブラック駅 といった駅は小説ではでてこない。この地図はハンザと共産主義者の停戦協定が結ばれた後の状態を表しているので、革命広場駅は共産主義者に譲渡され彼らの勢力下となっている。ミュータント対策や駅間抗争の影響により、地図に表せないくらい封鎖されているトンネルがあることから、実際にこの地下世界を移動しようと思ったら、すごく手間のかかる経路で迂回しなければならないだろう。

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メトロの本当の雰囲気を味わうには、小説を読んでみるのが吉

誰も信じられない。疑心暗鬼が渦巻く地下世界

ゲームに登場するブルボンやカーン(小説ではハン)は、随所でアルチョムを気遣ってくれたり、色々サポートしてくれるなど、頼りがいのある素敵なオジ様に見える。彼らは主人公を導くガイドであり、そして心強い味方だ。そのため、プレイヤーの意識は襲い来るミュータントやバンディット(盗賊)という目に見える敵にフォーカスすることができた。ただ、これはゲームだけの話で小説になるとグッと雰囲気が変わってくる。それは誰が敵で誰が味方なのか判然としないことだ。アルチョムに寄ってくる乞食や駅の監視員が味方でないのは明白だが、ブルボンやカーンですら信じて大丈夫なのか?という疑心暗鬼に陥る。

例えばブルボンの場合、彼の死後に所持品をチェックしたところ報酬として約束されていた弾丸を持っていなかったことがわかる。また、目的の駅についたらアルチョムを仲間に送り届けさせるとも言っていたが、そのような仲間もいない。お人好し的な発想をするなら、後から工面しようとしていたんだろうとも解釈できるが、用済みとなったら殺されていたとも考えられる。(もともとゴーストの精神攻撃を跳ね返したという評判を聞きつけたブルボンからスカウトされたのが同行のきっかけであり、ゴースト地帯を抜けたら用済みと見なされていたかもしれない。ただ幸いにも、ブルボンはそのゴースト地帯で命を落とすことになる。)

またカーンについても同様に、自分はチンギス・ハンの生まれ変わりだと公言して憚らないあたりが、ちょっと気がフれたおっさんぽくてなんだか信用できない。また燃え盛る火のような激しさを見せる眼光は、ゾッとするほど不気味でゲーム中のカーンに見られる優しく導いてくれるような印象は全く別物だ。そんな不気味なオヤジに「私に従え」的なことを言われても、素直に「はいそうですか」とはいかない。ゲームでは水戸黄門のように敵味方の区別がハッキリしていたが、小説の中はより現実味を帯びていてファジーな世界だ。そこが読むものを引き付けるんだろう。ここはぜひ小説を実際に読んでいただいて、体験してもらいたい。

ミュータントや人間なんて比じゃない。一番怖いのは暗闇

ゲーム内ではうまいこと光と影を表現しているが、残念ながら闇を完全に再現することはできていないと思う。地上と隔絶されているメトロは居住区画を除いて明かりがないため、真っ暗闇の状態だ。ハンドライトの明かりなど簡単に吸収してしまうようなどこまでも広がる漆黒の闇は、その存在だけで恐怖をかきたてる。小説の中で、身ぐるみをはがされたアルチョムがライトを持たない状態で長いトンネルを進むシーンがあるが、どんなに心細かったろうと想像するだけで悪寒が走る。ゲーム内では当然真っ暗にするわけにはいかないので(何も見えなかったら苦情くるしね)、すべてのシーンである程度の明るさは確保されている。それがたとえ光源がなにもないトンネルであったとして、「あなたの知らない世界」のスタジオみたいな妙に緑がかったライティングがされている。小説の読者という立場から見ると、ゲーム中には「こんなに明るいわけねぇだろ!」的なシーンがいくつも登場するが、それはゲームなんで致し方ないことだ。

こんな暗闇に対する怖さを小説ではうまく表現できていると思う。私が恐怖を感じる描写はいろいろあるが、そのなかから一例をピックアップしてご紹介したい。

一人でトンネルを歩いた経験のある者なら誰でも知っている”トンネルの恐怖”と呼ばれていた。トンネルを進む時、特に粗末な懐中電灯しか持ち合わせていない時、危険が背後に迫る感じがつきまとって離れない。ひどい時は、首筋にずっしりのしかかる視線を感じることもある。

いや、視線ではないのかもしれない。それが何者で、世界をどう知覚しているか、見当がつかないのだから。恐怖にいても立ってもいられなくなり、さっと振り向いて背後の暗闇に光をかざしてみるが、そこには誰もいない。ただ静寂と空虚が広がっているだけだ。しかし、後ろを振り向き、痛くなるほど闇に目を凝らしているうちに、今度は反対方向から<それ>が迫ってくるような気分になる。トンネルに明かりを照らし、前へ、前へと気持ちが焦る。先の闇に誰かいないか、後ろを見たすきに、前から襲ってこないか。そして再び、前方へ視線をやる。後ろへ、前へ、その繰り返し。大切なのは、自制心を失わないこと、恐怖のあまりパニックに陥らぬこと。すべて妄想で、怖がるものは何もないのだ、現に、何も聞こえないではないか・・・・。

しかし、そうは言っても、実際は、自制心を保つことは至難の業だった。特に一人のときは。みな理性を失い、有人駅に着いてもなおまだ恐怖を引きずり続ける。時が過ぎ次第に理性をとりもどしても、トンネルには、もう二度と入れない。メトロの住人なら誰にも覚えがある、押しつぶされるような不安が破壊的な錯覚になってしまうのだ。

出典:『Metro2033 上』 第4章 トンネルの声より       作:ドミトリー・グルホフスキー 訳:小賀明子

こんなクソッタレな世界で生き延びるには、徹底したマイクロマネジメントが必要!

アルチョムはダークワンの脅威を訴えるため、ポリスに向けて旅をすることになる。道中ミュータントが溢れる地上や、ファシストや野盗が屯するエリアを通過しなければならない。こんな危険極まりない地帯を旅するには、身を守る武器や汚染された大気を防ぐマスクなどの物資が重要だ。一部の弾薬は通貨としての価値もあるため、溜めこむか弾薬として使うのかといった管理が求められる。マスクについてもフィルタは時間の経過によって劣化するので、残量の管理も求められる。敵が見えたらとにかく銃をぶっ放す的な運用では死を招く。シリアスサムのようなうちまくり系のFPSを期待する向きには、はっきり言って不向きなゲームだろう。残弾数やフィルタの残量を気にしにがらのギリギリの運用が求められる。ここではマネジメントが必要な4つの要素を取り上げる。

ガスマスク

放射能で汚染された地上や毒ガスが充満しているメトロの一部では、そのまま外気を肺に取り込むことはできない。これらのガスは”健康に悪い”といったレベルのものではなく、ガスを1分ほど吸い続けたらお陀仏になってしまうほど危険なものだ。そこで大気が汚染されているエリアを探索する場合は、空気を浄化するためのフィルタをつけたガスマスクを装着しなければならない。ただし、このフィルタは利用時間によって劣化するため定期的な交換が必要になってくる。所持できるフィルタの数にも限りがあるので(買い漁れば別だが・・・)、必然的に探索に費やせる時間は限られてくる。

またフィルターの劣化とともにアルチョムの視界も悪くなってくる。これはフィルターの交換によって解消できるが、前述の通り数に限りがあるのでサクサク交換するのも考え物だ。更にマスク着用中に敵の攻撃を受けると破損する恐れもある(ヒビが入って使い物にならなくなる)。こういった制約を加味しながら、行動しなければならない。

弾丸

常に危険と隣り合わせの世界において、銃と弾丸は命綱のようなものだ。『Metro2033』の世界では、使用できる弾丸は大きく2種類に分類される。戦前に作られた威力の高い弾丸(5.45m軍用弾)と、地下世界で製造されたホームメイドの粗悪品だ。同じ1発でも前者のほうが威力が高いため、ここぞというときには頼れる存在となる。だが、この軍用弾は貨幣としての価値もあるため、いたずらに乱射するということは金をばらまいているに等しい愚行なのだ。その場の状況に合わせて、適切な弾丸を選択することが求められる。

武器

近接戦闘、中距離戦闘、スニーキング それぞれに適した武器が存在するため、弾丸と同様に状況に合わせた運用が求められる。例えば、近距離において威力を発揮するショットガンも中距離以上離れた相手に対しては効果がないため、十分にひきつけてから撃つべきだ。またこっそりを潜入したいなら、サイレンサー付の銃やヘルシング、ティハールといった音を出さない武器が必要となる。ランボーでいくか、ステルスでいくかはプレイヤーの選択に委ねられているが、私はステルスを強く推奨する。特に対人戦について不殺ではなく、投げナイフやヘルシングなどの回収可能(再利用可能)な武器を用いて敵を殲滅し、彼らの所持品を回収するとよいだろう。彼らは貴重な弾丸を持ち歩くカモだ。不殺でやり過ごすなんてもったいない。かといって正面からドンパチやるとこちらも弾丸を消費しなければならいため、こっそり近づいて片っ端から殺していくのがよろしいだろう。投げナイフなどを使って武器も回収できれば、投資ゼロでリターンが得られる。

またミュータントは所持品がない上に(当然だが)、ステルスでやりすごせるシーンは限られているため、シナリオ上どうしても弾丸を消費せざるを得ない。ハウラーの大群相手にナイフで立ち回るなんて真似はしたくないので、対人戦でしっかりと弾丸を確保しておこう。

ライト

真っ暗な地下世界において照明は欠かせない。ライトやナイトビジョンの電源は手動方式の万能発電機でまかなわれている。電力の消費によってバッテリーの残量が少なくなるので、こまめな充電が必要だ。敵を目の前にして明かりが消えたなんて事態にならないように、まめにシャカシャカ発電しておこう。

世界観を理解したいなら、日本語でのゲームプレイがお奨め

尚、ローカライズされており、露/英/日から吹き替え音声を選択可能。ロシア語が最も雰囲気が出ていてGoodなのだが、字幕は主要キャラしか表示されないため、NPCの会話が理解不能になるのが難点。NPC同士の会話から地下世界の噂話を知ったり、彼らの生活感を感じられることがある。メトロ独特の世界観に入り込んでいくためのエッセンスとなっているので、初回プレーは日本語吹き替えをお奨めする。

期待の次回作『Metro:Last Light』がいよいよ登場

『Metro2033』のディベロッパーであるTHQは経営不振に陥り、2012年に事実上の倒産状態となる。一時は次回作のリリースが危ぶまれたが、競売された資産 (Metroシリーズの販売権 約590万ドル)を『dead island』で有名なKoch Media(Deep Silver)が落札することで開発は継続され、めでたく新作のお披露目と相成った。Metroファンとしてはありがたい限りである。この新作は『Metro2033』の1年後の物語で21歳になった主人公アルチョムが新たに地下居住区で勃興したファシスト集団「第四帝国」と戦いながら,長い”核の冬”が終わりつつある地上世界へと足を伸ばし始めるというストーリーになっている。ちなみにシナリオは前作の著者であるドミトリー氏が手掛けているらしく、この点からも期待が高まる。リリースが待ち遠しい!